「自分に合っている仕事」って、何だろう?就職を目指す中、実際に働く中、ふと足を止めて考えることがあります。私たちは知らず知らずのうちに、まだ見ぬ「自分に合っている仕事」が歩みの先にあるはずだと信じて、歩き続けているのかもしれません。「自分に合った仕事」は、この道の先で本当に待ってくれているのでしょうか。 新卒で就職したのち、原因不明の体調不良で退職をされた相談者さんが、あいち福祉振興会での作業体験を振り返り、このようにお話しされていました。 「やっぱり、体を動かすのが好きなんだなって、改めて思いました」 仕事には、外側から見たイメージが付きものです。そして、ときとしてそのイメージは、私たちから仕事を遠ざけてしまいます。 〈きっとキツイ仕事に違いない〉 〈ケガをするかもしれないから危険だ〉そういった言葉が、仕事の中身から私たちの目を逸らせてしまいます。 仕事に対する負のイメージにがんじがらめになると、就職に対して足がすくんで動けなくなります。それは、自分の身を守るための自然なこころの動きです。そこから一歩、いや半歩でも、自分の目指す未来、〈こうなりたい〉と思う未来に近づくためには、仕事についての自分のイメージ、構え、考え、価値観と改めて向かい合い、強すぎるイメージから解き放たれることが求められます。 前述の相談者さんは、前職までの自分の思いや価値観を振り返りながら、まずは体を動かす作業体験を行うことになりました。作業体験を通じて、仕事に対して自分が捉われていたイメージから距離をとり、自分の実際の経験に耳を傾けることで、 「やっぱり、体を動かすのが好きなんだなって、改めて思いました」という言葉が湧き出てきたようです。この作業の内容は人によっては辛く大変なものですが、この方にとってはとてもしっくりと馴染んだようで、これまで休むことなく作業に取り組まれています。今では、その方なしには作業が回らないと言われるほど、無くてはならない存在となっています。 また、作業を通じて〈自分がやったことで結果が生まれる〉という感覚が生じ、自ら就職活動を行うようになった結果、スポーツ関係の体を動かす仕事に非常勤職員として採用されました。さらに、活動的になってきた相談者さんに触発され、これまで専業主婦だったお母さんが社会との繋がりを持つため、パート勤務を始めました。 人それぞれに、合う仕事は異なります。そして、「自分に合う仕事」は、実際の自らの経験の内に、そっと自分自身に語りかけているようです。それが現在の仕事なのか、これから選ぶ仕事なのか、自分の体からの言葉に耳を傾けると、思いがけない発見があるかもしれません。