「今年は、大きな変化の年になりそうですね」まるで一年の目標のような響きですが、あいち福祉振興会の心理面談に来られた、十年間ひきこもっていた三十代男性の言葉です。 初めてお会いしたときに、「(心理士が)どんな人なのか、不安でした」と話されるほど、人と接する際の緊張が強い様子。少しずつ私に慣れていただけるよう、彼の好きな男性アイドルの話から会話を始めていきました。 男性アイドルの話題が尽きてくると、次第にアルバイトの話や、〈自分で稼げるようになりたい〉という気持ちが語られるようになってきました。 「食事が好きなので、飲食店でアルバイトをしたい」ということだったので、まずは、業態が近い「喫茶サロン」でのボランティア活動に参加していただきました。 その時間を積み重ねる中で、 「この前は、こんな工夫をしました」 「みなさん、気さくに話してくださるので助かります」と、喫茶サロンでの取り組みや出来事を私に話してくれました。最初は緊張していたボランティア活動でしたが、場の支えもあり、人と関わることに自信を持てたようです。 つい先日、 「とうとう、ずっと行きたいと思っていた神社に行くことができました。お参りのときにこう、ぶわーっと風がきたように感じて、体が包まれたような気がして…」そう話す彼の目から、涙が溢れてきました。少し驚きましたが、彼にとっては応募の書類を出すことではなく、そのお参りをすることができた瞬間が、大きな一歩を踏み出した瞬間だったのだと思います。思いはもう、ひきこもっていた自分ではなく、アルバイトを始めていく自分へと切り替わっていました。 「今年は、大きな変化の年になりそうです」まだまだここからではありますが、彼の言葉には確信があると感じました。