自己受容とは、「あるがままの自分」を理解し認めたうえで、すべてを受け入れることを指します。「あるがままの自分」とは、「良いところも悪いところも、すべて引っくるめての自分」のことです。人から指摘されても、自分ではそうは思わないこと。自分でも薄々感じていても、認めてしまうわけにはいかないこと。自分の生きづらさを正面から受け止めるには、その人なりのプロセスがあるのではないかと思います。 三十代でこれまで仕事経験がなく、視覚にやや困難を抱えていた男性は、自分が好きなゲームに関する仕事をしたいと望んでいました。これまで働いた経験はありませんでしたが、「好きだから応募ができる。他はどうしても踏み出せない」と、難易度の高い求人票に挑戦していきました。 一回目の応募。面接対策を行い、空白期間の答え方も自分なりに分析して臨みました。結果は不採用でしたが、 「久しぶりに、一歩踏み出すことができました。でも、何がダメだったのかなぁ?」と経験から自己分析に繋げ、〈自分には、働くことへの不安がある。自信をつけたい〉と、興味のあったホームページを自ら作り、「自分で決めたことだから続けたい」と、ホームページの更新を続けていきました。 二回目の応募。同じ企業への応募だったためか、面接時の対応は冷たいものだったそうです。 「今回の応募で、ひとまず諦めがつきました。ホームページの更新を続けてきたことで自信はつきましたが、まずは初めてのアルバイトなので、できそうと思える条件で探そうと思います」そう言ってゲームに関する仕事から、今の自分にとって踏み出すことを考えられる他の仕事へ、じっくりと舵を切っていきました。 彼にとって、〈初めてアルバイトをする〉という不安で怖い気持ちに向き合うためには、自分で決めたプロセスを一通り体験していく必要があったのだと思います。その中で学び、打ちひしがれ、調整し、逸らし、焦り、深め、学ぶことで、今の現状に立ち向かう覚悟を作っていったのだと思います。 「ちゃんと失敗できたのは良かったです」こだわりの強い彼にとって、「転ばぬ先の杖」よりも、「自分で決めた挑戦」の中で失敗の痛みを体験することが、これまでの自分を受け入れるために必要な実感だったのかもしれません。働ける居場所 安昌堂の場が、安心して挑戦のできる基地となれていたら幸いです。