「自分で動かないと変わっていかないかな、と思って聞いてみました」そう言って外でのボランティアや体験的な活動がないかを積極的に聞くようになってきたのは、腰椎を痛めている二十代の女性でした。昔から腰椎に課題があり、障害者手帳を取れるほどではないが就労には制限のある状態で、〈自分の身体で続けられる仕事なんてあるのか〉と不安を感じていました。人と話すことに緊張するようで、とても小さな声で話す方でした。 「コミュニケーションに自信がない」「社会経験がないから不安」と就職活動には消極的でしたが、〈何かしないといけないと思う〉と、就職準備支援を希望され、当事業所での軽作業訓練を開始していきました。 作業の中で発見した自身の強みは二つ。一つは、「仕事上の報連相をしっかりと気が付いてできる」ということでした。それでも雑談は苦手で、休憩中は一人で過ごしていることも多く、「コミュニケーションが苦手」と悩んではいるものの、作業であれば人に伝えることができる。もう一つは、腰のケアを続けながら、新しい活動にも参加してみる、という「前向きな姿勢」でした。 そんな中始めた清掃のボランティアで、少しずつ場に慣れて地域の方と話せるようになりました。そこで出会った方の息子さんの話や、「待っていても変わらないことが多いから、自分から動かなきゃ」といった会話の中で、いろいろと感じることがあったようで、冒頭の「自分から動いてみようと思って」という前向きな行動に現れるようになっていきました。 私から見ると、彼女は最初から「何かしなきゃ」と十分に行動をされていたと思いますが、その思いが少しずつ形になっていく場所と機会を、私たちが提供できたのかな、と嬉しくなりました。今回は、変化の種は本人の中にあり、本人が勇気を出して一歩踏み出すことで、自分の中にある種に水をあげることに繋がっていったと思います。何か少し変化をしていくときは、やはり何か少し踏み出していくことも大切なんだと改めて感じています。 現在彼女は、「まずはアルバイトだけれど、将来は八時間できるように体を作りたい」と言って短期間のアルバイトを始めたり、ボランティアなどの体験的な活動があれば積極的に参加したりして、体と活動づくりに励んでいます。恐る恐る、苦手だったコミュニケーションをとりながら。