就職活動をするときに、「自己理解」という壁に突き当たることがあります。〈自分には、どのような経験があるのか?自分の長所は?短所は…?〉 「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という言葉をご存じでしょうか。有名な『孫子』という兵法書の一節ですが、相手の現状や状況をしっかりと把握し、自分自身のことをよくわきまえて戦えば何度戦っても勝てる、といった内容ですね。ちなみにこの後は、「彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し」と続きます。 就職活動では、「彼」が職業・業界研究、「己」が自己理解にあたるのだと思います。自分自身について苦手なこと、苦手だからこそ気を付けること、どんな得意を活かして、どんな職務に役立てることができるか…。考えると頭が痛くなってきますね。 ある利用者さんは、自分の長所を考えることに頭を悩ませていました。 「普段、家から出ることが少ないので…」と、悩んで出した答えは、「作業中、Aさんにやり方を伝えられたこと」と、「作業のやり方のコツを発見して、みんなに伝えられたこと」の二つ。一つひとつが具体的な場面かもしれませんが、〈自分には長所がない〉と感じていた彼が、軽作業という訓練の場を通して、その中で「うまくいったこと」を見つけ出してくれていたことに、正直感動しました。外に出て一歩踏み出し、新たな動きの中で、新たな自分の側面を発見することで、「自分」を説明する言葉が形作られていくのかもしれませんね。その言葉を面接に立ち向かう武器に変えていけるよう、また一緒に頑張っていきましょう。