「お金は稼ぎたいんだけど、体力的にキツそうかな」「やってみたいけど、どうせ話すのは苦手だからやめようか」相談支援をしていると、ご自身の目標と現実のギャップにもがき苦しみ、時に目を背けて一時退避をする瞬間に出会うことがあります。「本当は求めているけど、いつも選ばないという選択を繰り返してきたから今回も」いつもではないですが、そんな気持ちが隠れているときは、ときどきイソップ童話の『すっぱいブドウ』の話を思い出します。手が届かない高い木の枝にブドウを見つけたキツネが「どうせあのブドウは酸っぱくてまずい」と、ブドウをあきらめて立ち去ってしまう物語です。心理学において、このような現象は「認知的不協和」という概念で説明されてきました。自分の過去の行動と自分の好みが一貫していない場合に、「認知的不協和」という不快な感情状態が引き起こされ、それを減らすために自分の好みを変化させると考えられています。自分のこころを守るために、困難との間にクッションを作ることが必要なときもあります。ブドウのかわりにレモンを甘いと言い聞かせてお腹を満たすことが必要なときもあります。しかし一方で、『選ばなかった=嫌い・きっとできない』が、『選んだ=好き・できるかも』と、小さな実感のある自信に積み重なっていくことがあることも教えてくれています。「本当はやってみたいんだけど…(いまはとてもじゃない)」「本当はやってみたいんだけど。(どうかな?)」同じ言葉からもその奥に潜んだ本当の気持ちに出会えるように対話を重ねていくことで、止まるときと進むときを“選択できるように”寄り添っていくことをこころがけていきたいと感じる日々です。