あいち福祉振興会の就労準備支援事業では、キャリアコンサルティングと心理相談を2つの軸の支援を提供させていただいています。心理相談では、主に相談される方がお話をされ、それを心理士が伺うという基本的な流れのため、最初の数回の面談では、相談される方のお話が相談時間のほとんどとなります。そのうち話が深まってくると、相談される方と心理士との相互の会話が少しずつ増えていきます。ある数回目の相談で、ふと私がつぶやいた言葉があります。「ずっと100%なんですね」その相談は、すでにお仕事に就いている方の相談でした。業務への不満や疲労で心身に影響が出てきており、転職をしたいが経済的に困窮してしまう、という状態でした。しばらくお話を伺った後、私の中からこぼれるように、その言葉が出てきました。最初は相談された方はきょとん、とされていましたが、なぜ自分が常に100%の力で仕事をしているのかということを、その状況を踏まえて詳しくお話をされました。その次の相談で、その方は次のようにお話をされました。自分は常に100%で仕事をしている。では、他の人はどのように仕事をしているんだろう?と思い、仕事をしながら他の方の動きを観察してみました。すると、大切な業務以外の時間では、それぞれちょっと息抜きをするなどしていて、業務時間内でメリハリをつけていることに気がつきました。思わず同僚の一人に、自分の働き方を聞いてみると、自分たちのできないことまで無理をし続けていると体がもたない、だからできることはしっかりやって、できないことは上司に相談すればいい、という返事がありました。この体験はその方にとって大きな転機になったようで、「これまではいつ仕事が振られてもいいように、常に100%でいることが当たり前だと思っていました。けれど、場合によっては80%くらいの時があってもいいんですね」と笑顔でお話をされました。その後、その方はご自身に負担がない程度で、その仕事を続けることを選択されました。おそらく、その方にとって当たり前であった「ずっと100%」のルールが、少しずつその方自身の心や体に影響が出るまで無理を強いてしまっていたのだと思います。そこで、他の方の働き方を自ら進んで知ることによって、「ずっと100%」ルールから「場合によっては80%」ルールに更新され、その方に合った働き方に変わっていったのでしょう。相談される方が働きやすくなるきっかけを生み出すことも、心理相談の役割だと、改めて感じました。