「一人では、ここまで辿り着けなかったと思います」三か月程の就労準備支援のあと、就職を決めた方が、そう呟かれました。就職活動をすることに、「これからの自分の進むべき指針を決める」という意味を、私たちは体の奥底に感じているのではないかと思います。 仕事で、人生のすべてが決まるわけじゃない。いつだって、方向転換はできる。頭では分かっているし、ときどき自分自身にそう呟きながら、それでもその重みを感じずにはいられません。 就職を「トランジション(移行・節目の意)」として捉える考え方があります。学校から社会へ、これまでの文化から異なった文化へ、今までの役割から新しい役割へ…。就職することを未体験の世界へ移行することと捉え直すと、そこにとてつもないエネルギーが必要であることを改めて感じます。仕事に就くことができるまで、多くの方が試行錯誤を繰り返します。顔を向ける方向を変えたり、自分自身の足下を確かめたり、新たな生活に至る道のりの中で、ふと立ち止まるときがあります。〈本当に、自分は社会に必要とされているのだろうか?〉。 不採用の結果と向き合い、自分自身の生き方を探すうちに、こころや体が疲れを訴えるときがあります。疲れた自分は、自分自身にささやきます。〈本当に、自分は社会に必要とされているのだろうか?〉と。 西国巡礼などで、「常に弘法様がついていてくれる」という意味で、「同行二人」という言葉があります。弘法大師のように偉大な人物ではありませんが、同行二人の姿勢は、私たち就労準備支援事業に携わる人間に必要だと感じています。 ご自身の強みや社会の中での役割の大切さを実感でき、ご自身の足で前を向いて進むことができるよう、共に考え合う支援を行っていきたいと思っています。